『前世療法の奇跡』を読んで

現在、日本の標準的医療では、ガンが発生すると、手術で切除したり、抗がん剤で細胞を撃退するのが常識だ。しかし、患者が、生活習慣や考え方を変化させなければ、発病の原因は取り残されたままなので、また再発することもある。心と身体は一体であり、心にアプローチすることで病の進行を止めたり軽減させる手法として、催眠療法がある。本書は、萩原医師が、病院勤務時代に体験したことを紹介し、病気にとって心がいかに大切かを述べたものである。

 第一章では、萩原医師が代替療法を選ぶことになった経緯が説明されている。萩原医師は、ガンの自然治癒(自然退縮)に目を付ける。人間は本来、自分で病気を治す力(自己治癒力)が備わっている。その自己治癒力を高めることで、元気に生きていく人もいる。例として、末期ガンでも10年以上生き永らえた奇跡、薬の効果を信じることで小さくなったガン、余命告知により症状を悪化させた人、命を自分でコントロールした人など、様々なエピソードにより、いかに心が大切かを説いている。萩原医師は、西洋医学以外の方法でも、患者自らを救うお手伝いができるのではと、催眠療法を中心とした医療機関「イーハトーヴクリニック」を開業する。

 第二章では、前世について語られている。大事なのは、前世の有無ではなく、クライアントの悩める心が癒されるかどうかであり、身体に大きな負担をかけずに心と身体の病の原因を突き詰める有意義な方法として、前世療法を扱っている。

 第三章では、心を扱う代替医療について説明されている。数多くある代替医療は、身体に働きかける治療と心(魂)に働きかける治療の大きく二つに分けることができる。西洋医学と補完医療を合わせたものを統合医療というが、どちらかといえば身体に働きかける医療中心となる。統合医療に心(魂)をプラスした医療が全人的医療すなわちホリスティック医療だ。ここでは、萩原医師が行っている代替医療の例として、ソマティックヒーリングについて説明されている。多くの代替医療では、症状の進行を遅らせたり、気持ちをラクにしたりする効果を期待した方がよい。病気を完全に治癒するのではなく、病気と仲良く生きていくことも可能だという。代替医療の基本的な考え方は、自分で病気を治すといった心構えを持つことだ。自然治癒力を高める方法としては、①考え方を変える②血液を浄化する③身体を温めるの3つを上げることができる。①については、心から納得すること、腑に落ちることが必要であり、催眠療法により潜在意識の声を聞くことで、考え方の根本を変えるきっかけづくりをしているという。

 第四章では、死に向き合う人々について語られる。まさしく人は、心の持ち方ひとつで人生を築いているという。

 第五章では、魂の存在について語られる。集合的無意識の世界では、魂を感じることができる。自分の魂とつながっている宇宙の根源である源に身をゆだねて生きていくことが本来の生き方である。それは心地のよいものである。それに逆らって生きることは、無理をしているために、身体や心に悪影響が出てくる。本来の道から外れてしまったために、苦しい人生を歩むことになる。自分の魂に身をゆだねることが、あらゆる悩みや不満、恐怖といったものから解放してくれる。魂を永遠だと信じていれば、今世の死を受け入れられるし、今を精一杯生きることにつながる。現実を受け入れた時に、人は癒されるのだという。

 おわりには、運命に逆らわず、これからの人生を愛と慈愛で満ちたものにしていってほしいとの願いで結ばれている。

 私も、ガン経験者であり、生還した後は治療法の選択に大いに悩んできた。最近、親しい友人を同じ病で亡くしたこともあり、「なぜ、人は死ぬのだろう。」「なぜ、私は生かされているのか。」「この先、どうやって生きていけばよいのか。」と自問自答を繰り返してきた。そんな時に、本書を手にし、大いに勇気づけられた。私が知りたかった答えが、見つかったように思う。「自分のやりたいことをしなさい。」これが究極的な答えだと感じた。思えば、本書に出会い、催眠療法基礎セミナーを受講する運びとなったのも、私の運命であろう。この先、何年寿命が残されているのかはわからないが、催眠療法により自分の本質とつながり、魂の求めるままに、優雅に流れるように生きていきたいと思った。

『前世療法の奇跡』萩原優 著 ダイヤモンド社


写真撮影 yoko koike

埼玉県某PA上空

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